はじめに
 
 水位計は、マンホールポンプ施設の自動運転を行うために、ポンプ槽内の水位を検知する装置であり、主に転倒式、投込み式、気泡式、差圧式の4種類が使われます。マンホールポンプ施設の導入初期では、転倒式水位計が主に使われましたが、信頼性の面から気泡式・投込み式が使われるようになってきました。
 
転倒式水位計(フロートスイッチ)
(1) 機能と構造
 
 転倒式水位計は、図-2に示すようにフロートケース内にスイッチを設け、水位の変化によりフロートケースの姿勢を変化させて内蔵されたスイッチの接点信号を取り出すタイプです。
図−2 転倒式水位計(フロートスイッチ)
 
(2) 選定上の留意点
@  転倒式水位計は、他の水位計に比べて安価ですが、1つの水位計で1つの水位のみを検出するため、停止水位用、運転水位用、高水位用など検出水位に応じた個数を設置する必要があります。又、水位計の信号を検出するフロートレスリレーなどの低電圧回路(一般的には24V以下)を制御盤内に設けます。
 
A  転倒式水位計は、マンホールポンプ施設用などでは汚水の影響を受けにくく安定した制御を行えるタイプが使用されますが、浮力により姿勢を変化させるため、狭いポンプ槽内では各水位差が200mm程度以上を必要とするほか、フロートケースへのスカムの付着により誤動作を起こすことがあります。
 
投込み圧力式水位計
(1) 機能と構造
 
 投込み圧力式水位計は、図-3に示すようにポンプ槽内に圧力センサを設置します。水深による圧力が圧力センサ受圧面にかかるとその圧力に応じて変形し、一定変化した位置で平衡します。この受圧面の変位を電気信号に変換してコントロールユニットに伝送し、水深に換算するタイプです。伝送ケーブルには大気圧をセンサの内側に導くパイプ(中空ケーブル)が設けてあり、これによって大気圧の変動を補正しながら水深を連続的に計測できる水位計です。
図−3 投込み圧力式水位計
 
(2) 選定上の留意点
@  投込み圧力式水位計は、1つの水位計で多数の水位を検出できます。コントロールユニットは、制御盤内に設置し、ポンプ槽内の水位を連続的に表示できるほか、停止水位用、運転水位用、高水位用などの水位設定が制御盤面で容易にできます。又、各水位差は実用上最小100mm程度とすることができます。
 
A  投込み圧力式水位計は、圧力センサの受圧面以下の水位は計測することができないため、圧力センサは極力低い位置に設置する必要があります。又、圧力センサの設置高さが変化すると、計測水位に誤差が生じるため、ポンプ槽内清掃時や圧力センサ点検時には、元の高さに正確に設置する必要があります。
 
B  投込み圧力式水位計は、伝送ケーブルを通じて雷サージの影響を受ける場合があるため、計装用避雷器の設置などの雷害対策を行う必要があります。
 
気泡式水位計
(1) 機能と構造
 
 気泡式水位計は、図-4に示すようにエアポンプとチューブで連結された空気吐出口をポンプ槽内に設置します。エアポンプで常時空気を送り込んで空気吐出口から気泡を水中に放出させると、コントロールユニット内の圧力スイッチには常に水位の変動と連動した空気圧がかかることになります。この圧力(水深)の変化によって圧力スイッチをON-OFFさせると共に水深を連続的に計測できる水位計です。
図−4 気泡式水位計
 
(2) 選定上の留意点
@  気泡式水位計は、1つの水位計で多数の水位を検出できます。コントロールユニットは制御盤内に設置し、ポンプ槽内の水位を連続的に表示できるほか、停止水位用、運転水位用、高水位用などの水位設定が制御盤面で容易にできます。又、各水位差は実用上最小100mm程度とすることができます。
 
A  気泡式水位計は、空気吐出口以下の水位は計測することができないため、空気吐出口は極力低い位置に設置する必要があります。又、空気吐出口の設置高さが変化すると、計測水位に誤差が生じるため、ポンプ槽内清掃時や空気吐出口点検時には、元の高さに正確に設置する必要があります。
 
B  気泡式水位計のコントローラには、空気供給源であるエアポンプを内蔵しており、エアポンプの摺動部が消耗部品となるため定期的な交換が必要です。
 
差圧式水位計
(1) 機能と構造
 
 差圧式水位計は、図-5に示すように容積式グラインダポンプに内蔵されます。汚水中に圧力スイッチとチューブで連結された構造で、圧力スイッチには常に水位変動と連動した空気圧がかかることになります。ポンプケーブルには大気圧をセンサの内側に導くパイプ(中空ケーブル)が設けてあり、これによって大気圧の変動を補正しながら、圧力スイッチをON-OFFさせる水位計です。
図−5 差圧式水位計
 
(2) 選定上の留意点
@  差圧式水位計は、容積式グラインダポンプに内蔵されるため、基本的に他のポンプとの組み合わせはできません。
 
ポンプ槽の構造
 
 投込み式水位計、気泡式水位計及び差圧式水位計は、水位を検出する際に大気圧補正を行って精度を確保しています。この大気圧補正は、湿度の高いポンプ槽内で行うことは難しいため、ポンプ槽内と制御盤内の気圧が同じであることを前提として、コントロールユニットが設置されている制御盤内で大気圧補正を行っています。
 
 ところが、マンホールポンプ施設をはじめとする汚水管路は、雨水などの不明水の流入防止や臭気対策のために密閉構造の蓋を採用するなど、気密性の高い構造が採用されるケースが増加しており、ポンプ運転時などの水位変動でポンプ槽内の気圧が変化し、水位計による計測水位に誤差を生じる場合があるほか、各家庭の封水トラップを破壊して臭気が逆流する場合もあります。
 
 このような不具合を防止するためには、ポンプ槽などに大気圧を取り込む通気管を設けることで防止する必要があります。(各家庭への影響に対しては圧送先のマンホールも含まれます。)
 
水位計の使い分け
 
 主に圧力式下水道収集システムに採用される容積式グラインダポンプを用いたポンプ施設は、ポンプに内蔵された差圧式水位計で運用されます。
 
 主に圧力式下水道収集システムに採用される遠心式グラインダポンプを用いたポンプ施設や、輸送システムに採用されるマンホールポンプ施設では、水位計を別途用意する必要があり、その選択にはポンプ施設の重要性により決定する必要があります。
 
 ポンプ施設の重要性が高いマンホールポンプ施設では、投込み圧力式水位計又は、気泡式水位計が選定されます。さらに、主となる水位計故障に備えバックアップ用として転倒式水位計(フロートスイッチ)を設けることで、ポンプ施設としての信頼性を向上させることができます。
 
 ポンプ施設が故障した際の影響範囲が比較的狭い収集システムに設置されるポンプ施設では、住民の協力が得られることを前提として、コスト的に有利な転倒式水位計が主に採用されます。

※本文は、雑誌「月刊下水道」に投稿した原稿を加筆修正したものである。
 
作成日:平成19年12月18日
(社)日本産業機械工業会 排水用水中ポンプシステム委員会

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