7 用途
 
 ロータリ・ブロワ、真空ポンプ(ルーツ式)の用途例

1−1 水処理

 耐久性にすぐれ、長時間連続運転が必要な水処理設備に最適のロータリ・ブロワ

概要
 汚水の処理法として微生物による活性汚泥法が広く用いられています。処理槽の底部の散気管から空気を噴出させ、槽内の微生物への酸素補給を行うことによりプランクトンが増殖し、水が浄化されます。その空気源としてブロワが使われています。
特長
 圧力変化による空気量の変化が少なく、構造が簡単で耐久性もすぐれています。
  空気量もほぼ回転速度に比例した特性を示し、使いやすいのも大きな特長です。さらに内部無潤滑のため清浄な空気が送られ、また、機械効率が高く、維持管理もしやすいため、長時間の連続運転が必要な水処理設備には最適のブロワといえます。

注意事項
(1) 吸込口の位置は清浄な空気が取り入れられるようにして下さい。
また、ブロワの点検・修理が容易にできるようにスペースを広く取って下さい。
(2) ブロワ室内温度が40℃以上になる場合は換気扇を必ず設けて下さい。
(3) 吸込ロ・吐出口の閉め切り運転は、ブロワヘの過負荷となるため、バルブなどは全開で運転して下さい。
(4) 動力は圧力の上昇に比例して大きくなるため、必要以上の圧力損失をかけないようにして下さい。
(5)

空気量の調整は回転速度を変更して下さい。また、微調整は大気中あるいは水中への放出などの処置をして下さい。


1−2 水処理

 騒音が少なく、防音用建屋が不要の水中ロータリブロワ

概要
 下水道等が普及していない地域では、各家庭や建物から出るし尿と生活雑排水を処理するため、「合併浄化槽」が設置されており、この浄化槽の“ばっ気”用としてロータリ・ブロワが使用されています。この「合併浄化槽」は大きな汚水処理施設と違って、住宅やマンション・建物毎に設置されるため、設置面積や地上部の建屋に制約を受ける場合があります。このような土地の有効活用を図る必要がある水処理の施設では、ブロワを水槽内に設置する水中ブロワが多く使用されています。

特長
(1) 水中に没しているため、水中に放出される音は水と空気の境界層で反射されて、空気中に出ません。また、陸上に設置するブロワとは異なり、防音用建屋が不要です。
(2) 地上部には吸込消音器しか出ませんので、景観を損ねることもなく、また、水処理施設の上部を、駐車場など有効に活用できます。
(3) モータとロータが直結されており、振動も少なく、水槽内に置くだけでよいため、据付が簡単です。
使用例 

1−3 消化ガス

 し尿及び下水処理場において力を発揮する消化ガス用ロータリ・ブロワ

概要
 主にし尿や下水処理場において、嫌気性処理設備で発生する消化ガスの吸引・圧送用として使われています。嫌気性処理設備とは、し尿や下水汚泥の有機物が無酸素環境で通常の生物活動ができる生物群(メタン生成菌)によって生物化学的分解をさせ、処理するものです。

[消化ガス組成(し尿)]
主成分 CO2 CH4 H2S
嫌気性消化槽の例(し尿処理ガイドブック−環境技術研究会)

2 特殊ガス

 都市ガス供給用ロータリ・ブロワ

 多くのガス会社で採用されている都市ガス供給用ブロワは圧力変動にともなう流量変動がきわめて小さいという、ロータリ・ブロワのもつ特性がみごとに生かされています。ロータリ・ブロワは構造がシンプルで、部品点数も少なく、その上非常に堅牢であるため、少し汚れた都市ガスの圧送にもその威力を発揮します。
  また、圧縮機に比べると、メンテナンスも容易で交換部品も少ないため、費用が安くすむのも大きな特長です。そのため、200kPaGの圧力分野においても、2段式ロータリ・ブロワが数多く採用されています。
  最近では、テフロンなどの軸封及びメカニカルシールやドライガスシールなどの著しい進歩と、その入手が容易になったことから、ガス用ブロワの信頼性はさらに向上し、採用範囲も一段と拡がってきています。

3 空気輸送

 油による吐出空気の汚染がない、空気輸送用ロータリ・ブロワ

  空気輸送装置の空気源として使用される圧縮機や送風機には多くの種類かありますが、その主なものを形式・用途別に分類すると次のとおりです。
〔形式〕 〔圧送用〕 〔真空吸引用〕
回転式
往復式
遠心式
ロータリ・ブロワ
往復圧縮機
遠心送風機
ロータリ・真空ポンプ
往復真空ポンプ
遠心送風機

  これらは、それぞれ性能上もっとも適当とする風量・風圧の範囲をもっていますが、一般的に往復式は高圧小風量、遠心式は低圧大風量に適しており、回転式はその中間的存在です。しかし、空気輸送の空気源としての選定にあたっては、必要とする風量・風圧の一点に関する適性ばかりでなく、その空気源機械のもつ風量・風圧・軸動力などの特性全般をみておく必要があります。すなわち、選定に際して考慮すべき諸元は次の通りです。

風量特性:
なるべく定風量特性、すなわち圧力の変動に対して風量変化の少ないものが望ましい。

軸動力特性:
広範囲の使用域について過負荷とならないように電動機を定めること。

吐出空気の清浄性:
吐出空気中にドレンや油分などを含まないこと。とくに食品や化学工業用では重要である。

吸引ダストの可能性:
吸引輸送の場合には、分離器を通過するダストを吸引するおそれがあるため、吸引ダストに対する安全性が必要です。ロータリ・ブロワは往復式と異なり、内部潤滑油は不要で、吐出空気が油で汚染されることがありません。また、容積形であるため、風量特性は空気輸送用空気源に適した定量形であります。一般に、粉体輸送に使用するロータリフィーダの空気ふきぬけ使用限界が50から60kPaG附近にあるため、ロータリフィーダ方式では輸送圧力が50kPaG程度に限定されます。このように、ロータリ・ブロワはロータリフィーダとその圧力範囲がほぼ一致しているため、ロータリフィーダ方式の圧送空気源としてもっとも多く使用されています。

4 炉

 クリーンな熱風が得られる、熱風炉の燃焼用ロータリ・ブロワ

概要
 熱風発生炉などの工業炉では、従来からバーナーの燃焼用空気源としてロータリ・ブロワが広く採用されています。また近年、熱風炉の用途の多用化とともに高効率化をめざして、熱風を高圧で(10〜50kPaG)押し込むことが多くなり、その空気源としてロータリ・ブロワが注目されています。ロータリ・ブロワは容積形であるため、炉の出口側に圧力の変動があっても空気量があまり変動せず、安定した炉の運転ができます。さらに、空気に潤滑油などの不純物が入らないためクリーンな熱風が得られることから、セラミック関係など高品質な製品の乾燥などに最適です。

5 製紙

 消費動力が少なく、効率もいい、抄紙機用ロータリ真空ポンプ

 抄紙機のサクションボックス、クーチ、プレスなどの脱水に、ロータリ真空ポンプ(ルーツ式)やナッシュ式真空ポンプなどが用いられていますが、これらはいずれも、水を吸い込むだけでなく空気も一緒に吸い込みます。したがって、できるだけ吸込側にセパレータを設けて水と空気を分離し、真空ポンプでは空気だけを、渦巻ポンプは分離水を吸い出すような方式がとられています。一般に、ロータリ真空ポンプ(ルーツ式)はナッシュ式真空ポンプに比べて消費動力が少なく、効率もいいため、抄紙機用の真空ポンプとして数多く採用されています。それらの性能・経済性を比較すると次のようになります。
  〔ルーツ式真空ポンプ〕 〔ナッシュ式〕
全断熱効率 70〜75% 45〜50%
所要動力(常用) 0.8 1.0
所要動力曲線の傾向 真空範囲で動力が少ない 真空度の変化に対し平たん
吸込空気温度の影響 ドレンを分離し、別に補給水を入れるので吸込温度の影響(小) 補給水量により吸込温度が左右される。吸込温度の影響(大)
補給水 冷却水の使用量 少量の補給水とギヤケース冷却水が必要 大量の補給水が必要。水温が低いことが重要
基礎・据付・工事 据付容易、基礎も個別に分割可 大型基礎を要し、据付工事費大
 

6 集じん

 微粉や雰囲気ガスなどを排出する、集じん用ロータリ・ブロワ

概要
 微粉や雰囲気ガスなどが存在する所定の場所に強制的な換気を行い、汚染物質の排出を目的としてロータリ・ブロワが使用されます。吸引された物質はフィルタ・サイクロン・吸着剤などで濾過されます。

特長
 圧力変動が生じても空気量の変動が少ないため安定した運転状態を保つことができ、使用しやすいのが大きな特長です。また、高真空負荷や大中風量も得られ、仕様設定がしやすくなっています。ロータリ・ブロワは耐久性にすぐれており、長期連続運転が可能です。

注意事項
(1) 吸込□・吐出口の閉め切り運転はブロワヘの過負荷となるため、バルブなどは全開で運転して下さい。
(2) 動力は圧力の上昇に比例して大きくなるため、必要以上の圧力損失をかけないように計画して使用して下さい。
(3) フィルタ・分離器などの目詰まりが過負荷の原因となるため、定期的な清掃と点検が必要です。
 
窯業関係 化学関係

7 汚泥(特装車)

 空気流と真空力で強力に吸い込む、土砂・泥水吸引用ロータリ・ブロワ

概要
 空気力輸送と真空吸引の両方の機能をもち、深所の水や固体は空気流で、浅地の土砂やヘドロは真空力で、それぞれ強引に吸い込む高性能吸引作業に使用されます。
  心臓部に湿式ロータリ・ブロワを使用することによって、体積効率と高真空を考慮した高性能が発揮できるように特別設計されたものです。また、トラックに積載することによって可搬式にすることもできます。

[使用例]
汚泥の大量吸引
汚泥の高揚程吸引
浄水場の沈砂回収
終末処理場のスカム沈砂回収
推進管工事の土砂回収
熱延冷延のスケール回収
炉修時のレンガくずの回収
分離槽、濃縮槽のスラッジ回収
 

8 その他

電力
原子力発電所の原子炉内の放射能サンプリング用やオフガス排出用に、火力発電所の灰処理系のフライアッシュ(ボイラ内で燃焼した微粉炭の浮揚灰)の補集及び搬送用に使用される。

PSA
PSAとはPressure Swing Adsorption(圧力スイング吸着)の略で合成ゼオライト等の吸着剤に、CO,CO2,N2等のガスを吸着させ分離させることであり、そのガスの圧力変動(加圧・減圧)用に使用される。

発酵
家畜の糞尿等を発酵させ堆肥にするのに使用する。
槽内に集めた糞尿等の下部からブロワで空気を送ることにより発酵を早めることができる。

半導体
クリーンな真空を必要とする半導体チップの製造工程にドライ真空ポンプとしてルーツ式の真空ポンプが使用される。

養殖
各種魚介類の養殖には、新鮮な酸素供給と水質均一化のための撹拌が必要であり、その空気源として吐出空気のきれいなロータリ・ブロワが適している。また近年、水族館や活魚槽などへの利用も進んでいる。

土木建設
トンネル工事等の空気排気用、トンネルの換気用として、また、建築物への耐火被覆材の吹き付けの空気源として使用されている。

配管清掃
配管の取替えや、点検時に生じる配管内のホコリ、鉄粉等の除去、配管内の各種コーティング作業時のコーティング材供給用として、また、下水道管等の洗浄用に利用されている。

回収
一般工業用掃除機、集塵機に利用されている。この場合、フィルタをブロワの前部に設け、ゴミ等が混入しないようにする必要がある。

吸着搬送
ルーツ式真空ポンプと吸着パットを利用して真空力を発生させ、鉄板等の重量物や、ガラス等の破損しやすい物、アルミ、木材、紙等の非磁性体を吸着させ搬送する。

排煙脱硫
ボイラー等から出る排煙内のSO2を液体又は固体の化合物に変え、これを排煙から除去する設備で、排煙を吸引し、吸着塔へ送気するために使用されている。

オゾン発生
高濃度のオゾンを発生させる方法に無声放電を用いる方法がある。この方法は、交流高電圧を印加した2つの電極間にロータリ・ブロワで空気または酸素を供給することによりオゾンを発生させる。

真空包装
生鮮食料品の真空パック用の真空発生源として使用されている。

真空乾燥
乾燥させるには加熱か有効であるが、加熱させると不都合な場合がある。この場合、液体の蒸気圧特性を利用し(真空度を上げると低い温度で水分が蒸発する)乾燥させる。この真空源に利用されている。

レジャー機器
造波プールの波を発生させる装置(真空ポンプにより、真空タンク内に水を吸い込み、一気に水を開放する)に利用されている。また、ゲレンデの人工雪発生装置の気力輸送用に使用されている。

医療
バイブラバス(泡風呂)は健康にも良く、病院やホテル等の浴槽でその空気源としてロータリ・ブロワが使用されている。

船舶
船舶内の残油の回収用及び水処理用として使用されている。

計測機器
車の排気ガス成分分析用のガス吸引ブロワとして使用されている。

撹拌
メッキの高品質化(メッキ厚均一化)にはメッキ槽の撹拌が必要であるが、機械式ではできず、一般にブロワ利用によるバブリング撹拌を行っている。

塗装
吐出空気に水分や油分か含まれないため、塗装の吹き付け用の空気源として使用されている。

加脱湿
紡績、たばこ、印刷工場等では、静電気発生防止や室内湿度一定化が、また、しいたけ栽培等では高湿度環境が必要である。このような場合、加脱湿装置の空気源としてロータリ・ブロワが使用されている。