産業再生と環境保全へ向けて

(平成14年11月21日 関西大会)

一般社団法人 日本産業機械工業会


わが国の産業界は、バブル崩壊後の長期に亘る停滞と中国を始め東アジア諸国の急激な追い上げによって、極めて厳しい状況に直面している。民間設備投資の抑制、公共投資の削減、更に、株価の大幅下落によって、企業の体力も限界に近づきつつある。また、個人消費は伸び悩み、景気の先行き不透明感が一段と増してきている。

製造業においては、景気低迷からくる業績不振に加え、設備過剰感からの設備廃棄や高コスト対策による生産拠点の海外移管など構造的変化の影響が増大してきているが、産業機械工業の内需不振もそうした需要構造の変化が背景としてあると見られる。一方、外需はアジア経済の立ち直りもあり、特に中国の高い成長が維持されていることから、輸出に持ち直しの傾向がみられる。

本年度上半期の受注は、対前年同期比で内需25.4%減、外需2.5%増加、合計では18.5%の減少1兆9,872億円となっている。本年度後半も輸出への期待はあるものの、米国の株価下落による逆資産効果やイラク攻撃等から先行き不透明感が深まり、米国の景気減速が世界全体に影響を及ぼし、世界的な需要減退の可能性もある。外需依存にはかなりリスクを伴うものと思われる。

産業機械工業は、確固たる技術の集積とユーザーの新たなニーズにも応え得る開発力を保有している業界であり、また、当工業会会員企業は地球規模での環境保全と循環型社会の構築に資する技術・環境設備を有している。これまでの当業界の活動は産業の発展と環境の保全に資するものであったが、今後は、さらに積極的に取り組み、産業の再生と持続可能な成長の実現に寄与しなければならないと考えている。

しかしながら、企業を取り巻く環境はドラスティックに変化してきている。価格破壊等による市場構造の変化、連結経営、時価会計・減損会計導入による企業の透明性確保、法規制の遵守(コンプライアンス)、コーポレートガバナンス、経営の意思決定における環境問題の重要性更には外国法規制等への対応、国際的課税の問題等々、経営上また事業展開に際して考慮すべき、また解決すべき重要な事項の出現によって、これまでの企業の在り方が問われている状況にあると思われる。

企業がこうした課題に適切且つ円滑に対応していけるよう、また、企業の活性化、製造業等産業基盤の強化のため、これまでの制度の見直し、新制度の導入など大胆且つ適切な政策を講じて頂くよう政策当局に対し要望する。

こうした認識のもと、当工業会は以下の政策を提言する。

1.不況克服の為の施策

企業業績が低迷して、設備投資の縮減、雇用能力縮小、消費の伸び悩みから、さらに経済が悪化していくといった悪循環が懸念されている。こうした状況を打開するため、需要拡大につながる財政政策、研究開発投資・設備投資を促進する税制、新産業・新事業の創出を促す規制緩和等適切な施策を講じるべきである。

(1) 需要拡大のための施策
   @ 需要不足解消のため、IT、環境(都市再生や防災を含む)、バイオなど重点を絞った公共事業を拡大すること。
   A 設備投資を拡大させるため設備投資促進税制を拡充強化するなどの支援策を講じること。
   B 新産業及び新規事業の創出を促す各種規制を緩和すること。
   C 金融機関の不良債権処理加速化に伴う、貸し渋りや貸し剥がし等による不合理な企業倒産や取引の停滞を防止するため、政府の信用保証制度など万全の対策を講じること。
   D 株価の下落は企業の保有株式評価損をもたらし、企業体力を弱めている。株価安定のためには経済の安定と景気回復が必要であり、そのためにも政府の総合デフレ対策を早期に実行すること。
(2) 企業活性化に資する施策
@ 研究開発促進のため、税額控除の拡大等試験研究促進税制を見直すこと。
A 研究開発補助金制度は複数年度での利用可能となるよう弾力的運用を認めるなど制度の拡充をはかること。
B 今後の研究開発が多岐にわたる一方、企業の開発費負担には限度がある。研究機関・大学は新産業・新事業の創出を促進するため、企業の連携制度を構築・強化すること。
C PFI事業において、透明性・信頼性の高い契約が可能となるよう関係する法令等を整備し、単に官側のコスト縮減を狙いとせず、官民双方に合理的にリスク分担できる仕組みをつくること。
D 特許の迅速な保護が必要であり、知的財産権訴訟を迅速に処理すること。


2.産業活力の再生(構造改革)のための施策

産業再生のための柱の一つは、企業における事業の再構築であり、組織の再編である。各企業はこれまで「分社化」「グループを越えての合併」など所謂「選択と集中」と言われる再構築に真剣に取り組んできているが、未だ道半ばにある。これらを一段と促進させる為の支援策を講じるべきである。

@ 成長分野での事業買収や不採算事業の撤退、売却などによる事業再生構造改革を促進し、企業の競争力を回復する為にも、産業再生特別措置の内容を拡充し、適用期限を延長すること。
A 企業は連結決算、連結納税制度の導入を図り、連結中心の効率的経営を構築している最中であるが、連結納税制度導入の阻害要因となる付加税は早期に撤廃すること。
B 人材の流動を促進させる労働・雇用制度(例:日本型401K年金の導入を促進する税制の整備)を整備し、また、人材派遣等に関する規制を緩和すると共に雇用セーフティネットを充実させること。
C 企業において新卒者の基礎学力が低下してきているが、人材は企業の財産であり、競争力の源泉であるから、学力低下につながる教育方針(ゆとり教育)を見直すこと。


3.海外事業活動の推進支援策について

 当面、内需の急速な拡大は期待し難い状況にある。企業は需要不足を補う策として輸出の拡大に力を入れているが、そのため海外における販売拠点の拡充を図っている。同時に、海外市場への浸透を図るため生産拠点を設け、一部或いは完全な生産移管を行う企業も増加している。わが国企業が海外企業との競争に打ち勝つため、阻害となる規制或いは税制を見直すとともに、強力な支援策を講じるべきである。
@ 政府開発援助(ODA)予算の増加に努力し、タイド化を促進し、日本企業の受注率を向上するよう支援すること。
A 円の為替相場は、対USドル、対ユーロで適正水準を保つよう努めること。
B 途上国では特許権や商標関係の法律や罰則が整備されていないので、模倣品が大きな問題となっている。知的所有権保護に関する法律の整備、その適切な実施を徹底するよう政府間の政策協議等での指導が必要であり、また、模倣品問題を解決している企業からのデータベースを何らかの情報として活用できる仕組みをつくること。
C 諸外国の各種輸入規制に対し、特に不合理な案件については自由貿易体制の視点から、政府として各国政府に働きかけを行うこと。
D プラント輸出への支援策を講じること。


4.環境保全に資する各種対策について

 地球温暖化、廃棄物最終処分場の逼迫等の環境問題への対応が迫られる中、企業においては環境負荷軽減の配慮が製品設計から製造・流通・販売・再利用に至るまで全過程で必要となってきている。そうした企業の取り組みに対する支援措置として一層の制度整備を図るべきである。
@ 一般廃棄物と産業廃棄物の混合処理について、民間の創意工夫を生かせる廃棄物処理の実情に合ったガイドラインを示すこと。また、その際、補助金対象事業として明確な評価を要望する。
A 多くの企業がゼロエミッション達成に向け廃棄物の減量・再生に努めているが、リサイクル化の促進に当たり法規制が足枷となる状況にもある。
B 京都議定書発効に向けて早期に法の整備をはかること。また、京都メカニズム(排出権取引・共同実施等)の早期実現に向け国際交渉を継続するとともに、国内制度を整備すること。但し、炭素税等環境税の導入については慎重に検討すること。
C アジア地域等への環境保全技術の啓蒙・移転・普及に対し、各種優遇措置による支援を強化すること。
D 環境に優しい製品へのインセンティブを賦与すること。
E 環境負荷軽減に寄与する各種投資には税制上優遇措置等の支援策(例:新エネ供給システムにおけるグリーン電力証書購入や産業用太陽光発電導入企業に対する設備費補助政策の適用期限平成14年度末の延長等)を講じること。


                                                              以上



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