経済の長期低迷阻止に向けての提言

(平成13年11月21日 関西大会)

一般社団法人 日本産業機械工業会


米国の景気減速と共に世界経済は急速に悪化してきた。そうした折、米国で起きた同時多発テロ事件は経済に計り知れぬ打撃を与えた。テロ根絶に対する軍事行動の影響で経済が萎縮する心配があり、事実米国は景気後退が確実となり、アジア、ヨーロッパ等にも多大な影響をもたらしており、とりわけわが国経済は極めて厳しい状況に立たされることとなった。

こうした中、わが国において企業業績が軒並み悪化し、企業は生き残りをかけ、ギリギリまでの経費切り詰め、人員削減、投資抑制などの努力に加え、これまでにない抜本的な事業構造の改革に取り組んでいる。

産業機械業界の状況をみると、本年度上半期受注実績は総額2兆4,377億円、対前年度比0.2%減少となった。内需は、民間設備投資の手控え、公共投資の抑制によって大幅に減少してきており、また、輸出もプラントを除き減少傾向が強まった。そのプラントも事件後不透明となっている。後半の受注は、世界全体が後退局面にある中、為替、金利、株価等の懸念材料も多く、低迷するものと予想され、通期での受注見通しは極めて厳しく、対前年度比で減少するのではないかと思われる。

近年、産業の空洞化が進んできており、大きな問題となり始めている。わが国の製造業は消費財、或いは組立産業の分野において海外シフトが顕著であったが、中国を始めとする東アジア諸国の経済的台頭、とりわけ技術力の向上により、部品やコンポーネントの調達あるいは製造拠点の移転も増加し始めている。今後、更に各種産業の海外シフトが増加すれば、産業機械など資本財においても、その製造拠点を海外に移転させる可能性も出てくるものと思われる。

しかしながら、こうした製造業の海外シフトが過度にすすみ、産業空洞化が拡大すれば、わが国における技術開発力の弱体化、また雇用の減少を来たし、社会的不安をもたらす虞がある。「モノづくり」はわが国経済の基本であることを改めて認識し、長期的視野に立ち、起業マインドの醸成、ベンチャー企業の育成、新産業の創出、既存事業の競争力強化に資する産業基盤の整備等の政策を講ずるべきである。

 こうした認識の元、工業会は以下の政策を提言する。

1.景気低迷の長期化阻止と回復に向けた対策

景気の長期低迷の虞があり、これを阻止し、わが国経済の成長力を取り戻すため、次の政策を講ずるべきである。

(1) 構造改革と景気対策とのバランスをとった経済対策の推進
(2) 経済活性化の起爆措置として、都市再生・環境・情報技術関連・新産業創出の分野への集中的公共投資の実施(前倒し、補正を期待)
(3) 資金調達環境を健全かつ円滑なものとするため、不良債権問題解決による金融機関の早期正常化と、資金供給・追加金融緩和策等の機動的な実施


2.製造業の活性化に資する環境の整備と産業空洞化への対応

わが国が製造業の脆弱化により生じる産業の空洞化を阻止し、企業が活力ある事業活動を営み、国際競争力を維持、強化するため、次の政策を講ずるべきである。

(1) 新規産業創出に向けた産官学連携推進のためTLO(技術移転機関)への支援強化
(2) 適正な輸出採算を確保するために必要な円安誘導政策の実施
(3) 高コスト構造の是正、特に公共料金等インフラコストの引き下げ
(4) 新産業の創出及び新規事業に関する各種規制の撤廃若しくは緩和
(5) 電子取引の拡大に対応可能な電子認証制度の早期実現と、電子化の進む特許等知的財産権の保護に向けた国際的取り組みの推進
(6) 研究開発分野に対する補助金の一層の拡充、省庁横断的な総合システムの導入等による制度運営の合理化


3.構造改革の推進に伴う諸問題への対応

 成長に不可欠の構造改革は、その過程において種々の問題、いわゆる痛みを伴うとしている。しかしながら、構造改革を円滑に遂行するためには、雇用問題等その痛みを最小限にとどめるべきであり、次の対策を講するべきである。
(1) 人材の移動が容易に行い得る労働・雇用制度の整備及び人材派遣対象業務規制・派遣期間制限や有期労働契約に係る規制の緩和
(2) 官民が連携した職業紹介・再就職・職能開発支援サービス(人材ネットワークの整備、離職者の職業訓練・再就職プログラムの開発)の充実強化などによる雇用のミスマッチ解消、離職者に対するセーフティネットの充実
(3) 資金調達が困難になる場合を想定し、中小企業を対象とした運転資金融資制度の拡充


4.環境保全に資する各種対策の実現

 地球温暖化、廃棄物最終処分場の逼迫等の環境問題への対応が迫られる中、環境配慮を経営戦略の中に積極的に取り入れ事業活動に取り組む企業が増えている。一方で、こうした企業活動を制約する規制は依然として多い。省エネルギー・資源循環型社会の構築に向けた一層の制度整備に向け、以下の施策を講ずるべきである。
(1) 京都メカニズム(排出権取引・共同実施等)早期実現に向けた国際交渉の継続、国内制度の早期具体化
なお、企業負担を著しく増大させる「炭素税」の導入には反対する。
(2) 資源環境・環境負荷低減に資する設備・機器・施設の普及に向けた支援策(対象機器利用者への税制軽減措置、発電利用まで視野に入れた廃棄物・下水処理施設の整備支援策等)の拡充
(3) リユース・リデュース・リサイクルの更なる促進のため、廃棄物の範囲・区分・定義の早急な見直し、再生品の安定供給に向け廃棄物処理法等に係る各種規制の撤廃
(4) アジア地域等への環境保全技術の啓蒙・移転・普及に対し、各種優遇措置による支援強化
 こうした政策の実現を政策当局に要望すると共に、産業機械工業がこれからも引き続き書く主産業の基盤としての重要な役割を果たし、わが国の産業発展に寄与していかなければならないと考える。

                                                              以上



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