21世紀産業発展に向けての提言

(平成12年11月21日 関西大会)

一般社団法人 日本産業機械工業会



 わが国経済は、実質成長率がプラスに転じ、生産の増加、企業収益の改善、設備投資の増加など回復に向け、明るさが増してきているが、消費が伸びないこともあって、本格的な回復軌道に乗ったとは言い難い。従って、景気の自律的回復への歩みが明確になるまで、財政的支援は必要であると思われる。

 かかる経済状況下、当工業会の本年度上半期産業機械の受注実績は、総額2兆4,425億円、対前年同期比18.4%増と大きく伸長した。そのうち内需は、ほとんどの機種で前年を上回り、14.1%の増加となり、外需も、アジア向けが回復して来たことに加え、北米、欧州、中南米等の地域への輸出拡大努力が実り、38.3%の増加となった。

 後半の受注は、原油の高騰、通貨ユーロの下落、株価の低迷、財政赤字の拡大、金利上昇など懸念材料が多く、見通すことは容易ではないが、足許の状況から見れば、内需は、企業収益改善をバックとした製造業向けの増加を中心に、回復基調を維持出来そうである。外需も、米国経済の好況持続、アジアの安定が得られるならば、増加を見込める。こうしたことから、当面堅調に推移するものと期待される。

 これからの経済環境はグローバル化、少子・高齢化、IT(情報技術)革命等が一段と進むと見られるが、企業には、21世紀においての生き残りを賭け、技術開発やコスト低減など地道な努力と共に事業構造の尚一層の変革が求められる。現在、経営には、市場に迅速に適応すべくスピードが要求されており、ITを駆使しての変革や流通部門の合理化が進展し、事業の拡大、新事業の展開、更には、新しい産業への取り組みが見られる反面、旧来型の事業では、途上国の追い上げや他業界企業の参入等による競争激化から、厳しい対応を迫られている。そうした状況下、経営上先ず企業組織の再編やスリム化が迅速且つ円滑に実施されることが必要とされている。

 しかしながら、事業の再構築として事業の撤退、廃業や生産拠点の過度の海外移転を予期以上に進めた場合、産業基盤を脆弱化させ、経済発展の芽を摘むばかりでなく、失業者を増大させ、社会的不安を惹起させる要因ともなる。そのため、企業の再編や事業のスリム化・転換に伴う諸問題を出来るだけ解消・緩和すべく環境の整備が不可欠である。

 また、物的資源に乏しいわが国においては、所謂モノづくりはわが国経済存立の根幹であり、製造業を維持し、発展させていくことは極めて重要である。また、社会的に要請される環境保全は、自然保護や生命の維持に不可欠なばかりでなく、持続可能な経済成長を実現させる為にも必要なことである。

 こうした認識の下、当工業会は政策当局に対し以下の提言を申し上げる。

1. 社会的要請に配慮した景気対策
 景気回復の息切れを防ぎ、自律回復への道筋をつけるための対策として、輸出競争力を維持・強化し、また、環境保全や安全確保など社会的要請度が高い公共事業等に重点を置き、次の施策を講ずるべきである。
(1) 地球温暖化を防止する公共施設、再資源化等リサイクル化のための施設等の社会資本整備や地震に強い都市構造の整備を重点とした公共投資の拡大
(2) 事業活動、設備投資の活発化に資する税制整備
(3) 行き過ぎた円高の是正(特に、ユーロ並びにマルクの行き過ぎた安値水準がわが国の産業機械業界にとっては最大の事業上の阻害要因となっており、未だ高水準にある対ドル相場を引き下げるべきである。)
(4) IT社会の基盤となる制度・施設の整備及びITの導入を促進する通信料の引下げ

2. 環境の変化に対応した経済構造改革の推進
 グローバル化、少子・高齢化、IT普及による経済・社会制度の変化、アジアを始め発展途上国の経済的台頭など環境変化に対応すべく構造改革を推進するため、次の施策を講ずるべきである。
(1) 人材の移動を容易にさせるため労働・雇用制度及び慣行の改革、人材派遣制度の充実、職業訓練制度の充実など環境整備及び諸年金制度の改革促進
(2) 製品・技術の国際競争力強化と共に国際的に通用する人材養成への支援(海外留学の奨励、海外留学生の積極的受け入れ、外国語での交渉力向上のための支援等)
(3) 弁護士、会計士等国際的に通用する専門家の養成
(4) 規制撤廃・緩和の推進

3. 事業再構築のための法制・税制面の整備
 企業が組織の再編により事業再構築を図る場合、迅速且つ円滑に実行できるよう、次の支援措置を講ずるべきである。
(1) 会社分割・合併等企業組織再編を実効あらしめるための税制の整備
(2) 連結納税制度の導入(2002年度実施)
(3) 確定拠出型年金制度の導入を始めとする各種年金制度の見直しと税制の整備

4. 循環型経済・社会システムの構築と地球温暖化問題への対応
 循環型経済・社会のシステム・ネットワークを構築するため、生産から流通・消費・回収・再利用について、ユーザーと企業、地域との連携を強化し、次の諸施策を講ずるべきである。
(1) 製品の生産から廃棄・リサイクルまでの環境負荷を調査、分析し、総合的に評価するLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)手法の調査・研究の推進と普及
(2) 廃棄物のリデュース、リサイクル、リユースの促進
(3) リサイクルを重視した廃棄物処理施設の整備
(4) アジア地域を中心として、環境技術の啓蒙・移転及び普及に対する支援強化
以 上
お問合せ先
本部(東京)企画調査部
TEL03-3434-6823
FAX03-3434-4767
mailto:prd@jsim.or.jp

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