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ノンクロッグポンプの導入 |
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ノンクロッグポンプは、汚水汚物用に使用される水中ポンプとして最も長い歴史を持つポンプであり、ポンプ口径及び出力の種類も豊富で、多くの用途に採用されています。 |
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ノンクロッグポンプの歴史的変遷を見ると、「ブレードレスタイプ」と「ノンクロッグタイプ」に大別されますが、系列としては両者を併せてノンクロッグポンプといいます。 |
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ブレードレスタイプは、図-7に示すようにクローズ型で羽根翼を持たない流水路構造の羽根車であり、ノンクロッグタイプは、図-8に示すように従来の羽根車の羽根翼枚数を極力少なく(1枚〜2枚)した羽根車です。 |
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共に、汚水処理施設や小規模ポンプ施設など異物(固形物)を含む汚水や雨水を圧送・揚水するポンプとして広く採用されています。 |
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図−7 ブレードレスタイプ
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図−8 ノンクロッグタイプ
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ノンクロッグポンプの特徴 |
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ノンクロッグポンプは、羽根車内の羽根枚数を少なくし羽根高さを大きくすることで、羽根車内の通過空間を極力大きくしたポンプであり、表-3に示す様に羽根車の構造により大きく分けて4つに分類できます。
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表−3 ノンクロッグポンプの種類 |
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一枚羽根 |
複数枚羽根 |
セミオープン羽根 |
○ |
○ |
クローズ羽根 |
○ |
○ |
※複数枚とは、極力少ない枚数であり、基本的に2枚です。 |
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(1) |
セミオープン羽根の特徴 |
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羽根車の羽根翼を固定する円板が羽根上部の片面しかない構造をセミオープン羽根といいます。 |
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羽根下部は、吸込みカバー(ケーシング)との間に僅かな隙間を有して回転します。羽根車の製作・加工が容易であり、又、閉塞時等の異物除去が容易なため、比較的小口径ポンプに広く採用されています。羽根前面と後面の圧力差により吸込みカバーとの隙間で僅かな逆流が生じるため、この隙間の大きさがポンプ性能に影響を与えますが、この隙間を大きくすることで、羽根翼入口部に繊維状の異物が絡んだ場合でも排出されやすくなります。又、クローズ羽根よりポンプ効率が低い傾向を示します。
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(2) |
クローズ羽根の特徴 |
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羽根車の羽根翼を固定する円板が羽根上部と下部の両面にある構造をクローズ羽根といいます。 |
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羽根車の製作・加工が複雑となり、比較的大口径ポンプに採用されています。 羽根翼と上下固定板が一体で羽根前後面での逆流が生じないためポンプ性能が安定していますが、羽根翼入口部に繊維状の異物が絡んだ場合は排出されにくくなります。又、オープン羽根よりポンプ効率が高い傾向を示します。
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(3) |
一枚羽根の特徴 |
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羽根車内の羽根枚数が1枚のもの、又は、羽根車内の流水路が1つのものを一枚羽根といいます。 |
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羽根車内の通過空間(異物通過径)を大きくとれますが、水力的なアンバランス荷重を受けるため、振動など機構的なトラブルも受けやすくなります。主として吐出口径φ150mm以下で用いられます。
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(4) |
複数枚羽根の特徴 |
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羽根車内の羽根枚数が複数枚のもの、又は、羽根車内の流水路が複数のものを複数枚羽根といいます。 |
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羽根車内の通過空間(異物通過径)は一枚羽根より狭くなりますが、水力的なバランスが良く、機構的なトラブルも少なくなります。主として吐出口径φ200mmを超える大型ポンプなど、異物通過径を大きく採りやすいポンプに用いられています。
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3 |
ノンクロッグポンプの性能 |
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ノンクロッグポンプは、汚水の全量が羽根車内を流れるため、水力的な損失が少なく比較的高いポンプ効率を示します。又、羽根車の設計が比較的容易なため、揚程重視タイプや吐出量重視タイプなど用途に合わせた性能を発揮できます。 |
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セミオープン羽根とクローズ羽根を比較した場合は、クローズ羽根の方がポンプ効率が高く、又、揚程重視タイプではクローズ羽根が採用される傾向にあります。羽根枚数による違いでは、羽根車の大きさが同じであれば、性能はほとんど変わりませんが、小水量運転域側で運転した場合は、羽根車内に逆流現象が生じ、特に一枚羽根では振動が発生しやすくなります。 |
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又、リミットロード特性により揚程変動に対しても過負荷運転とならず、低揚程大水量運転域側でも安定した運転が出来ます。
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4 |
異物通過性 |
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異物通過径を考慮して設計されており、流路が広く、異物が混入しても詰まりにくい構造です。 |
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羽根枚数・翼形状・口径などによっても異なりますが、ポンプ吐出口径に対して70%の異物通過粒径を有しています。特に、低揚程大水量運転域側では、異物が羽根車内や渦巻きケーシング内に滞ることなくスムーズな排出が可能です。
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(1) |
大きな異物 |
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ノンクロッグポンプは、羽根車内の流路が大きいため良好な異物通過特性を示します。
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(2) |
小さくて硬い異物(砂など) |
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セミオープン羽根では、羽根下端と吸込みカバーとの間の隙間に異物が噛み込む恐れがあり、拘束状態に至る場合があります。クローズ羽根では、この隙間が無いため異物の噛み込みもありません。クローズ羽根においても、羽根車とライナリングとの間の隙間に異物が噛み込む恐れがありますが、円周方向の隙間のため、オープン羽根における噛み込みよりも遙かに少なくなります。
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(3) |
軟らかくて長い異物(ひも状の繊維物など) |
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ノンクロッグポンプは、汚水の全量が羽根車内を流れるため、軟らかくて長い異物が羽根翼入口部に積層していく場合があり、羽根車の水力的なバランスが崩れると共に、積層した異物で流路が狭くなり閉塞状態に至る場合があります。セミオープン羽根では、ポンプ運転停止により吸込みカバーとの隙間から排出される場合がありますが、逆に、隙間に噛み込む場合もあります。
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問題点とその対策 |
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(1) |
大きな異物の通過性(異物通過径)の確保 |
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小口径のノンクロッグポンプでは、羽根翼入口部の通過空間を確保しにくいのですが、図-9に示すように一枚羽根を採用して羽根翼の入口部を湾曲させることで、異物通過径を大きく取ることが出来ます。大口径のノンクロッグポンプでは、複数枚羽根でも容易に異物通過径を大きく取ることが出来ます。 |
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図−9 湾曲翼
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(2) |
羽根翼入口部に積層する軟らかくて長い異物の排除 |
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クローズ羽根では排除が難しいのですが、オープン羽根では、図6-10に示すように羽根翼入口部を後退翼形状(入口部の流水方向に対して羽根翼下端側が後退している形状)とし、羽根翼入口部に絡んだ異物を羽根下端(吸込みカバー)側に移動しやすくし、尚かつ吸込みカバーとの隙間を大きくすることで、異物が排除されやすくすることが出来ます。 |
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図−10 後退翼
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(3) |
羽根下部と吸込みカバーとの間の隙間に噛み込んだ異物の排除 |
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図-11に示すように吸込みカバー面に、放射状の溝を設け、隙間に噛み込んだ異物を溝に沿って羽根外周へ排出することで、異物が排除されやすくすることが出来ます。 |
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図−11 排除溝
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(4) |
軟らかくて長い異物の切断(カッタ機構) |
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図-12に示すように羽根翼入口部の下端に超鋼チップを取り付け、吸込みカバーの吸込み口部形状をノコギリ刃状にすることで異物を細かく切断し、異物による噛み込みを少なくすることが出来ます。このカッタ機構を採用したポンプをカッタ付きポンプといいますが、このポンプもノンクロッグポンプの一種です。 |
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図−12 カッタ
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(5) |
積層する部位の廃止(ブレードレス) |
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クローズ羽根において、図-13に示すように羽根車内の羽根翼の代わりに円筒状の流水路を設けることで異物が積層する部位である羽根翼そのものを廃止して、異物積層を無くすことが出来ます。 |
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図−13 ブレードレス
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